協会案内 製品とサービス 講習会 イベント 資料請求
SciFinder

SciFinder

SciFinder のトップへ
科学関連情報を必要とする企業や政府機関,教育機関の研究者向けオンライン検索サービスです.

2013 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラムに参加して

   
2013 年 11 月掲載 

純粋に楽しく,同時にとても刺激的なプログラムでした


京都大学大学院薬学研究科 薬科学専攻 修士課程
辻 信弥 (つじ のぶや) さん


※SciFinder Future Leaders in Chemistry は世界中の情報検索に興味があり SciFinder を日々活用している化学分野の博士研究員・大学院生を対象とした情報交換プログラムです.



CAS 本部にて 2013 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラム参加メンバー (辻さんは右から 2 番目)


米国化学会の情報部門 CAS が主催する 2013 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラムが 9 月,米国オハイオ州コロンバスで開催されました.
多くの応募者の中から今年も日本の大学院生が選出されました.プログラムに参加した京都大学の辻さんにプログラムについて伺いました.


  • JAICI: 辻さんの研究テーマと SciFinder の使い方を教えてください.
  • 辻さん: 天然物の全合成研究,および有機分子触媒を用いた反応開発です.
    SciFinder は類似の反応検索や市販の化合物の検索などによく使います.


  • JAICI: プログラムに申し込まれたきっかけと動機を教えてください.
  • 辻さん: 過去のプログラムの記事を Chem-Station のブログで見て,興味を持ったのがきっかけです.
    参加費用は全て CAS の負担で,米国化学会年会への参加,CAS をはじめとした様々な企業・研究所の見学,および様々な国の学生・ポスドクの方々との交流ができるという事で非常に魅力を感じました.
    また,応募に必要な書類も英文のエッセイ,推薦状,履歴書の 3 つだけだったので駄目元で申し込んでみたところ選ばれた,というのが本当のところです.


  • JAICI: プログラムへの参加決定後,周囲からはどのような反応がありましたか?
  • 辻さん: 「おめでとう,じゃあお土産よろしく!」といった反応が最も多かったです.


  • JAICI: 8 日間のプログラムのスケジュールを教えてください.
  • 辻さん: まずは米国化学会秋季年会が開催されたインディアナポリスに集合しました.
    1 日目は市内の動物園に行ったりパーティーをしたりしました.その間,CAS のスタッフや他のメンバーと十分に話して打ち解けることができました.
    2〜5 日目は米国化学会秋季年会に参加しました.
    6〜8 日目は CAS のあるコロンバスに移動し,CAS スタッフとの様々なディスカッションに加えて,CAS 本部,オハイオ州立大学,Battelle 記念研究所,TechColumbus などの見学を行いました.

写真,アクティビティの様子1 写真,アクティビティの様子2 写真,アクティビティの様子3

  • JAICI: どのような方が参加されていましたか?
  • 辻さん: 参加者の所属大学はアメリカ,カナダ,イギリス,イタリア,オランダ,ポーランド,イスラエル,ドイツ,南アフリカ,オーストラリア,ニュージーランド,日本と様々でした.また,専門領域も有機合成化学,ケミカルバイオロジー,無機化学,医薬品化学,天然物化学など非常に多岐に渡っていました.参加者は皆モチベーションが高く,ディスカッションでも積極的に発言していたのが印象的でした.


  • JAICI: CAS でのディスカッションの様子を教えてください.
  • 辻さん: 最初は全員参加型のセッションで,CAS のスタッフが説明した内容に対して自主的に様々な質問や提案を行う,という形でした.参加者は非常に積極的で,活発な意見交換がなされました.次に参加者を 2 つのグループに分け,それぞれのグループでスタッフを交えて特定のトピックに関して意見を交わしました.こちらも同様に多くの議論が飛び交いましたが,人数が少ないこともあり,より個人の意見を求められるセッションだったように思います.CAS のスタッフは皆,非常に真剣で,一つ一つの意見や質問に対して真摯に対応していました.
    ディスカッションの内容は SciFinder 自体の説明に始まり,特許,インターフェース,マーケティングなど多岐に渡っていました.中でも印象的だったのは,新しい機能,レイアウトの試作版を見せてもらい,それに関する意見などを求められたことです.あるいは現在の製品の一部のアイコンを切り取り,これが何を示すか覚えているか,分かりやすいか,分かりにくいならどうすれば良いか,といった質問もありました.
    また,私の所属している大学では SciFinder が使えるのですが,世界にはまだまだ使えない大学,機関が多くあるということを知りました.そういった機関や,使える環境にいるのに使っていない人,使い方を知らない人に向けたマーケティングの重要性を感じました.

写真,ディスカッションの様子


  • JAICI: 今回のプログラムで SciFinder や CAS のデータベース作成など,情報検索において新たな知見は得られましたか?
  • 辻さん: 普段研究している際にはあまり意識することはなかったのですが,様々なディスカッション,あるいはBattelle 記念研究所,TechColumbus の見学を通して,特許情報が非常に重要な役割を果たしていることを認識しました.
    また,CAS 本部内の見学およびディスカッションを通して,データベース登録を行っているスタッフの多くが Ph.D. を持ったプロフェッショナルであり,彼らが手間をかけて膨大な論文・特許を読み込み,化学構造データや的確な抄録やキーワードなどの独自情報を追加することで, SciFinder を単なる化学情報の集積としてではなく,莫大なデータベースの中から必要な情報のみを非常に素早く, 正確に抽出しやすい形で提供することができるのだと改めて感じました.


  • JAICI: ディスカッション以外のアクティビティはいかがでしたか?
  • 辻さん: ディスカッションの他には,CAS 本部内の見学もしました.様々なところを見て回ったのですが,SciFinder のデータがどのように入力され,管理されているのかを実際に見て,説明を聞くことができたのは非常に良かったです.またデータセンター内の見学もあり,サーバールームと非常用発電設備は特に見ごたえがあって印象的でした.


  • JAICI: インディアナポリスで開催された米国化学会秋季年会はいかがでしたか?
  • 辻さん: 年会初日,SciFinder Future Leaders in Chemistry Presentations というイベントがあり,プログラム参加者全員が自分の研究紹介を行いました.専門領域は様々でそれぞれ非常に興味深く,内容もさることながら発表のスタイルが分野によって大きく異なっていたのも面白かったです.どうしても合成化学はスキームだらけのスライドになりがちなのですが,写真などでアピールできれば他分野の人にとっても印象的だな,と感じました.
    それ以外は Chemical & Engineering News (C&EN) の 90 周年記念パーティーに参加したこと以外は基本的に自由行動だったので,遷移金属触媒,有機分子触媒,全合成などの内容を中心に,興味のある教授の講演,あるいは学生・ポスドクの発表を聞きに行きました.中でも特に Jin-Quan Yu 教授,Stephen L. Buchwald 教授,Sarah Reisman 准教授などの講演が印象に残っています.普段聞くことのできないような講演をたくさん聞くことができて,非常に良い経験になりました.また,学会の規模の大きさも印象的でした.

写真,米国化学会第 246 回大会の様子1 写真,米国化学会第 246 回大会の様子2

  • JAICI: 様々な国の学生との交流はいかがでしたか?良い関係を築けましたでしょうか?
  • 辻さん: 最初は不安だらけだったのですが,みな非常に良い人ばかりで楽しく過ごすことができました.特に出身国ごとで固まるようなこともなく,打ち解けることができたと思います.移動中や食事中などの雑談はもちろん,自由時間にフリスビーをしたり,買い物に行ったり,飲みに行ったりもしました.
写真,食事の様子1 写真,食事の様子2 写真,アクティビティ 写真,アクティビティ2

  • JAICI: CAS の参加者に対する姿勢はいかがでしたか?
  • 辻さん: お世話になった様々なスタッフも皆,非常に良い人ばかりでした.特にお世話になった Peterと Sherriの 2 人には,プログラム中に誕生日や結婚記念日が重なったこともあり,参加者全員で寄せ書きとプレゼントを渡しました.


  • JAICI: このプログラムを経験したことでご自身の中に変化はありましたか?また今回の経験を,将来どのように生かしていきたいですか?
  • 辻さん: 様々な国,文化,研究背景を持つ人々と交流することで,自分自身,あるいは今の自分の研究を客観的に見つめ直す良い機会になったと思います.自分の今後の進路についても,今回のプログラムで出会った様々な人の考え方を参考にすることができたので良かったと思っています.私は今まで留学経験が無かったので不安も大きかったのですが,学生のうちに,あるいはポスドクになったときに再び海外へ行ってみたいという気持ちが生まれました.特に米国化学会年会には再び参加したいです.


  • JAICI: 次回のプログラムに参加しようと考えている方にメッセージをお願いします.
  • 辻さん: 過去の参加者の方も書いておられるように,やはり英語の準備は非常に重要だと思います.特に読み書きと比べて話すのが苦手だ,という人が多数だと思うので,自分の意見を正確に伝えられるようにしっかり準備しておきましょう.そして英語力と同じくらい,あるいはそれ以上に必要だと感じたのが自信と積極性です.最初は不安だらけだと思いますが,思い切って様々な人に自ら話しかけていくことで非常に充実した8日間になると思います.
    あとは時差ボケがあると夜飲みに行くどころか夕食でも辛いので,しっかり計算して飛行機の中で寝ておくことをお勧めします.


  • JAICI: プログラムに対するご意見・ご要望などありましたらお知らせください.
  • 辻さん: 化学を志す世界中の人と繋がることができた,非常に充実したプログラムでした.出身も専門も様々な参加者と意見を交わしたり雑談したりすることは純粋に楽しく,同時にとても刺激的でした.このプログラムに参加できて本当に良かったと感じます.


  • 指導教員 竹本佳司教授からのメッセージ.
  • 竹本教授: 今回のプログラムのように国際的な学生・ポスドク間での交流,あるいは様々なディスカッションは非常に多くの刺激を参加者にもたらすと思います.また国際化の流れの中,このような経験を通して自らの研究や意見を世界に発信する力を養っていく事は非常に重要だと思うので,学生には是非このようなプログラムに対して積極的に応募して欲しいです.


  • JAICI: どうもありがとうございました.


  • CAS について
  • CAS CAS (Chemical Abstracts Service) は米国化学会 (American Chemical Society) の一部門で,世界各国の科学雑誌,特許,その他資料から化学関連文献の索引・抄録を作成・提供しています.本拠地は米国オハイオ州コロンバスで従業員数は約 1,300 人です.編集スタッフは 600 人おり,うち 400 人が化学もしくは関連分野の博士号を有しています.
    CAS は冊子体 Chemical Abstracts (CA) からオンラインデータベースへと時代に合わせてシステムを進化させながら,世界中の科学者の研究・開発活動をサポートしています.


※ 2013 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラムについては日経サイエンス 2014 年 1 月号に掲載されました.掲載記事はこちら