2015 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラムに参加して

2015 年 11 月掲載 

世界の広さを身をもって感じました

千葉大学大学院薬学研究院 博士課程
中島 誠也 (なかじま まさや) さん

SciFinder Future Leaders in Chemistry は世界中の情報検索に興味があり SciFinder を日々活用している
化学分野の博士研究員・大学院生を対象とした情報交換プログラムです.

CAS 本部にて 2015 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラム参加メンバー (中島さんは後列右から 1 番目)

米国化学会の情報部門 CAS が主催する 2015 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラムが 8 月,米国オハイオ州コロンバスで開催されました.
多くの応募者の中から今年も日本の大学院生が選出されました.プログラムに参加した千葉大学の中島さんに,プログラムについて伺いました.また,中島さんの指導教員である千葉大学副学長(国際担当)・薬学研究院教授の西田 篤司先生にもコメントをいただきました.

  • 写真,到着日
    到着日のレセプション


    ポスターセッションの様子


    稲葉さんとポスターセッションにて

    写真,ディスカッションの様子1
    写真,ディスカッションの様子2
    ディスカッションの様子

    写真,スタジアム
    Ohio Stadium にて

    写真,米国化学会秋季大会のレセプションにて
    米国化学会秋季大会のレセプションにて

    写真,Peter Carlton 氏とCASにて
    プログラムのオーガナイザー
    Peter Carlton 氏と CAS にて

    写真,プログラムメンバーとボストンにて
    プログラムメンバーとボストンにて

    写真,プログラムメンバーのTae-woo Kwonさんと浅草にて
    プログラムメンバーの
    Tae-woo Kwonさんと浅草にて
    • JAICI: プログラムに申し込まれたきっかけと動機を教えてください.
    • 中島さん: Chem-Station やSciFinderのログインページの告知よりかねてからプログラムの存在は知っていました.過去の日本からの参加者の方々のインタビュー等も拝見し,プログラムに魅力を感じたので初めて応募してみました.
    • JAICI: プログラムへの参加決定後,周囲からはどのような反応がありましたか?
    • 中島さん: 指導教員の西田教授からは「Congratulations!」と.友人には内緒で応募していたので大層羨ましがられました.
    • JAICI: どのようなプログラムでしたか?.
    • 中島さん: 到着した日(8/9)の夜に宿泊先のホテルでレセプションがあり,その翌日から5日間(8/10-14)はオハイオ州コロンバスでCASスタッフの方によるレクチャーやCAS本社の見学,ディスカッション等のプログラムをこなしました.日中のプログラムは2015年の参加者と行いましたが,今年は特別に過去の参加者も招待されていたのでディナーや研究発表(ポスター)の際は過去の方々と交流することも出来ました.昨年の参加者である稲葉さん(現・イリノイ大学博士研究員)がいらしていたのでお話することが出来ました.
      8/15にボストンへ移動し,8/16からACS秋季年会に参加しました.その後8/20に名残惜しくも日本へ向けボストンを出発しました.
    • JAICI: どのような方が参加されていましたか?
    • 中島さん: アメリカ,メキシコ,ブラジル,イギリス,フランス,ドイツ,ベルギー,ハンガリー,イスラエル,オーストラリア,インド,日本,韓国,中国,台湾,マレーシアの大学の博士課程あるいはポスドクの方々計20人が参加しました.専門領域は有機合成や反応開発,天然物の単離,ポリマー,タンパク質,半導体,染料等様々でした.また,前述しましたが今年は過去の参加者も招待されていたので全体ではかなりの人数でした.研究に対するモチベーションが高く,論文もレベルの高いジャーナルに投稿している人が多くいたのでとても刺激的でした.
    • JAICI: CAS でのディスカッションの様子を教えてください.
    • 中島さん: ディスカッションと見学を組み合わせたバランスのいいプログラムでした.最初は CAS スタッフによる SciFinder の機能に関するプレゼンが行われ,メンバー全員で自主的に質問や提案を行う,という形でした.その後グループを2つに分け,CAS スタッフによる SciFinder のインターフェイスに関するより細かい説明,ディスカッションを行いました.現在の SciFinder に関して,Best, Worst, Idea, Question という 4 つのカテゴリーを作り,カテゴリーに合う意見を出し,ホワイトボードに書いていくスタイルです.私は,Idea として,目的とする化合物の名前や化学式を入力するだけで,ステップ数や収率,原料の値段等を考慮して最も効率的に合成できるスキームが検索できれば便利ではないか,といった提案を行いました.少人数な分こちらの方がより白熱した議論になったように感じます.その後再び全員参加のセッションに戻り,論文の書き方や掲載までのプロセス,著作権の取り扱い,SciFinder の広告方法,PhD 取得後のキャリアプランをテーマとした,幅広いディスカッションが行われました.
    • JAICI: どのようなディスカッションが行われましたか?
    • 中島さん: 小グループに分かれてSciFinderクイズが一度有りましたが基本的にはディスカッションのグループ分け等はありませんでした.「有機化学の教育方法について」のディスカッションと,「SciFinderの新しいインターフェイスの試用」の時間があり,質問や意見等を出しました.
    • JAICI: ディスカッションで印象に残っているトピックスをご紹介ください.
    • 中島さん: 有機化学の教育方法についてのディスカッションの際,SciFinderは教育で何が出来るか,どのようなサービスが必要かというトピックスで色々なことを想像でき興味深かったです.
    • JAICI: ディスカッションで,中島さんにとって新たな発見はありましたか?
    • 中島さん: SciFinderを使う際何を重視しているかが新しいインターフェイスの試用の際に専門領域や国籍によって異なり,驚くことや共感できることが多々有りました.
    • JAICI: CASスタッフとのディスカッションについて,どのような印象を持たれましたか?
    • 中島さん: PatentPakや新しいインターフェイスではユーザー視点でより情報を検索・閲覧しやすく工夫がされていたり,私達の実際にSciFinderを使うユーザーとしての意見にも注意深く耳を傾けてくれたりと,如何にしてSciFinderをより使いやすくするか真剣に考えている熱意が伝わってきました.
    • JAICI: 今回のプログラムで SciFinder や CAS のデータベース作成など,情報検索において新たな知見は得られましたか?
    • 中島さん: 普段使っているSciFinderの情報がどのように入力され,どこに保管されているのか知ることが出来ました.データを保存しているスーパーコンピュータの見学も興味深かったですが,一番驚いたのは論文や特許の情報の入力を全て人間が手入力で行っていることでした.中国のアミノ酸関係の特許を扱っている人に話を聞く機会があったのですが,構造式等もコピー&ペーストではなく,全て改めて打ち直しているそうです.
    • JAICI: ディスカッション以外のアクティビティはいかがでしたか?
    • 中島さん: ディスカッション以外では,CASでのレクチャーを始めとし,CASやOhio State University,Ohio Stadium,Battelle Memorial Instituteの見学,参加者のポスター発表会,ZipZoneでのレクリエーション,Huntington Parkで野球観戦等盛り沢山でした.Ohio StadiumはOhio State Universityの敷地内にあり,アメリカの規模の大きさに驚かされました.
    • JAICI: 米国化学会秋季大会では何をされましたか?
    • 中島さん: 自分の研究領域に関係のある講演会や発表を聞きました.特に天然物の全合成や反応開発のセッションを聞きに行っていました.普段論文でしか名前を見なかった先生の講演会や,自分と同じものをターゲットとしている研究発表を聞くことが出来たため非常に有意義でした.また,Expositionでは様々なグッズをもらったり企業の展示で話を聞いたりしました.
    • JAICI: 米国化学会秋季大会についてご感想をお聞かせください.
    • 中島さん: 初めてのアメリカ,初めての海外での国際学会参加だったのですが,とにかく規模が大きいという印象でした.また,日本の学会とは異なり,服装はビジネスカジュアルが主流だったのも印象的でした.
    • JAICI: 様々な国の学生との交流はいかがでしたか?良い関係を築けましたでしょうか?
    • 中島さん: 最初は不安でしたが,寝るとき以外常に他の参加者と行動を共にしていたので打ち解け合い,非常に良いコミュニケーションがとれたと思います.また,コロンバスでのプログラムの際はもちろんのこと,ボストンへ移動した後も観光や食事を共にすることでより関係を深めることができたと感じています.韓国の大学の方はプログラムの後,日本を少し観光してから帰国するとのことだったのでボストンで別れた後日本で再会し,2人で都内を観光し,その後居酒屋で飲んだりもしました.
    • JAICI: CAS の参加者に対する姿勢はいかがでしたか?
    • 中島さん: プログラム参加者に選出された時から帰国後までお世話になったPeter,Sherriを始めとし,様々な人の支援があってプログラムを楽しく,有意義なものとすることが出来ました.CASの方々には感謝の思いしかありません.Peter,Sherriにはオハイオ州でのプログラムの最後のとき,皆で寄せ書きしたTシャツをプレゼントしました.
    • JAICI: このプログラムを経験したことでご自身の中に変化はありましたか?また今回の経験を,将来どのように生かしていきたいですか?
    • 中島さん: このプログラムに参加したことで海外に対する意識が強くなったことを感じています.以前までは海外で研究することには尻込みする気持ちも有りましたが,プログラムを終えた現在は海外に留学しポスドクとして研究したいと考えるようになりました.研究分野に関しても様々な研究を行っている人がいて自分の分野だけに囚われていては駄目だなと感じることができ,これから視野を狭めずに研究,勉強を行いたいと思います.
    • JAICI: 次回のプログラムに参加しようと考えている方にメッセージをお願いします.
    • 中島さん: 英語でエッセイと履歴書を提出となると多くの日本人が尻込みをしてしまうかと思いますが,少しでも興味があったら参加を申し込んでみるべきだと思います.実際のプログラムでは渡航,宿泊,食事は全てCASが手配し費用も払ってくれますし,何よりそこで得られる経験や人間関係は一生ものの財産になります.私自身,他の参加者と交流することでこれまでの価値観もかわり,将来の選択肢も幅が広がったと感じています.ただもし参加が決まったら当然ですが英会話は勉強した方がいいと思います.特にネイティブとの会話では聞き返すことが多かったのでリスニングはネイティブのスピードで対策をした方がいいかと思います.
    • JAICI: 上記項目以外で,強く印象に残ったことをお聞かせください.
    • 中島さん:ほとんど全員の国籍が違ったので,お国柄というのがプログラムの要所要所で垣間見えました.また,同時に私自身も日本人だなと感じる習慣や考え方が多くあり,世界の広さを身をもって感じました.それとホテルのグレードはかなり高いと前情報から得ていましたが,その通りでコロンバスでもボストンでもかなり良いホテルでした.
    • JAICI: プログラムに対するご意見・ご要望などありましたらお知らせください.
    • 中島さん: これまでの人生では経験できなかったことばかりの素晴らしいプログラムでした.他の参加者ともいい人間関係が築けましたし,いつかACS年会で会おうと約束もしたのでそれも楽しみです.このようなメリットばかりのプログラムですが,プログラム自体の周知がまだ不十分だと思いますので是非多くの人が申し込めるよう宣伝して欲しいかと思います.
    • JAICI: どうもありがとうございました.

    • (指導教員・西田先生のコメント)
      西田先生 中島君から SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラムへの応募希望の話を聞いたときは,チャンスがあるなら是非チャレンジしなさい,と言いました.応募要件であるSciFinderについての英語のエッセイは,自分なりに SciFinder の価値,化学情報と自分の研究について考えてもらういいチャンスだと思いました.また,ネイティブにエッセイを添削してもらったほうが,自分の英語が通用するか確認する良い機会でもありますので,ネイティブの先生を中島君に紹介しました.

      中島君から SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラムの選考に通ったことを聞いたときはびっくりしました.ただ,中島君は以前から,海外研究者の講演会等で積極的に英語で質問したり,コミュニケーションを取っていたりしていましたから,日本代表として,CASのプログラムに参加するのは大丈夫だろうと思っていました.実際,帰国して研究室に戻ってきた中島君を見ると,さらに自信を付けてきたように思いました.

      サイエンスの世界では,国内外の大学・企業,どこででも耐えられる人材でないと,これからは通用しないと思っています.ですから,学生に国内だけでなく海外でもコミュニケーションを取り,活躍できる力をつけさせるのはわれわれ教員の役目だと考えています.

      私の研究室で開催しているゼミの担当者には,5?10分程度で,発表内容の概要のみ英語で発表させています.発表内容全部を英語で発表させると,本題に関してしっかりした議論ができなくなる可能性があるからです.配属されたばかりの4年生は,先輩が残した原稿を借用,丸暗記してゼミに臨みますが,何回か続けていくと,学生は少しずつ自分の言葉で表現してくるようになります.そして半年ぐらいすると,英語での発表に抵抗が無くなってくるようです.また,研究室の学生には,海外の研究者が来訪する際,研究内容を説明させる機会も与えています.彼らに内容を理解してもらえることで,学生は英語での発表に自信を持つようになります.中島君は修士2年で国際学会の口頭発表賞を受賞しました.

      最後に,ディスカッションやレクチャーなどの充実した内容に加え,ACS年会にまで参加させてくれる「SciFinder Future Leaders in Chemistry」は素晴らしいプログラムだと思います.若いうちに,まったく日本語が使えない環境に自分で飛び込んでいく,世界の研究者と知り合いになれるというのは一生の宝になるでしょう.得るものが多いプログラムですから,もし参加したいという気持ちがあるなら,自分を磨く意味でぜひチャレンジをしてほしいと思います.

    • CAS について
    • CAS CAS (Chemical Abstracts Service) は米国化学会 (American Chemical Society) の一部門で,世界各国の科学雑誌,特許,その他資料から化学関連文献の索引・抄録を作成・提供しています.本拠地は米国オハイオ州コロンバスで従業員数は約 1,400 人です.編集スタッフは 600 人おり,うち 400 人が化学もしくは関連分野の博士号を有しています.
      CAS は冊子体 Chemical Abstracts (CA) からオンラインデータベースへと時代に合わせてシステムを進化させながら,世界中の科学者の研究・開発活動をサポートしています.

    ※ 2015 SciFinder Future Leaders in Chemistryプログラムのインタビューは,「化学と工業」2015年12月号「Gallery」欄にも掲載しました.