SciFinder ユーザーインタビュー



科学情報データベースの最前線

ケミストリー×バイオロジー 知の融合で疾病克服を目指す

微生物化学研究所


半世紀に渡って抗生物質研究で世界をリードしてきた微生物化学研究所(東京都品川区)は,ケミストリーとバイオロジーの異なる知識を融合して,新型インフルエンザや多剤耐性菌による感染症など新たな課題を克服するための挑戦を続けている.そしてこの研究者たちの挑戦を支えているのが科学情報データベース「SciFinder」だ.


写真
渡邊匠主席研究員(左)と熊谷直哉主席研究員(右)
世界の抗生物質研究をリード

 国産初の抗生物質カナマイシンの発見者として知られる医学・細菌学者,梅澤濱夫博士(1914 - 86)は,カナマイシンの特許料を基金として,1958年に財団法人微生物化学研究会を設立.62年に附属の微生物化学研究所を開所した.研究所は微生物二次代謝産物を対象とした医薬シーズの探索を研究課題としており,各研究領域における最先端の研究成果を融合することで,抗菌薬,抗がん剤など14種の上市された化合物の発見・開発や,抗生物質の耐性メカニズムの解明などに貢献してきた.
 2010年には,基礎研究を充実させることを目的として体制を刷新.生物系と化学系の二所長制となり,生物系所長に野本明男博士が,化学系所長に柴﨑正勝博士が就任.このとき強化されたのが有機合成領域だ.
 有機合成研究部の役割は,生物系研究者が最新の生命科学を基礎にスクリーニングした化合物をベースに,新規化合物を合成すること.渡邊匠主席研究員は「生物が作り出した化合物を抽出することで医薬品を製造することもできるが,合成することで構造の修飾など医薬品の多様性と可能性が広がる.どうすれば安全性が高く,耐性もできにくい医薬品に育てられるのか.そこに微生物化学研究所に蓄積された研究成果が生きてくる」と話す.

新規化学反応の発見を目指す

 柴﨑博士の所長就任により有機合成研究部に新たな「知識」も加わった.柴﨑博士は,有機化合物を効率よく合成する不斉触媒の研究で世界をリードしてきたが,その経験を創薬に生かそうというのだ.
 熊谷直哉主席研究員は「これまで人類が開発してきた合成方法は,目的の化合物を得るために廃棄物をたくさん排出するなど無駄が多かった.それに比べて生物は必要な物だけを効率よく作り出す」と話す.
 熊谷主席研究員らが目指すのは,新時代の有機合成化学であり,それは創薬の大きなヒントになる.例えば,研究グループでは,これまで天然物を原料として製造されていた抗インフルエンザ薬ザナミビル(商品名:リレンザ)を,不斉触媒を用いて石油原料から化学合成することに世界で初めて成功.また高性能で再利用可能なナノチューブ触媒も開発しており,これらの技術が,新たな医薬品開発に応用されることが期待されている.

微化研・有機合成研究部の研究指針
アイデアを研究に結び付けるデータベース

 生物学と化学の融合によって成果を挙げてきた微生物化学研究所.研究者の「知のプラットフォーム」として活用されているのが,米国化学会の情報部門であるChemical Abstracts Service(CAS)が提供する世界最大の文献・物質・反応データベース「SciFinder」だ.
 渡邊主席研究員は「物質や有機化学反応だけでなく,過去の研究報告や特許情報まで網羅的に調べられるSciFinderは,有機合成の研究者には無くてはならない存在だ.所内では生物系の研究者も活用している」と話す.
 新たな化学反応の発見を目指す熊谷主席研究員は「アイデアは,専門や世代の異なる研究者同士フランクに話をしているときに生まれる.アイデアが新規なものであるか確認する際にはSciFinderを利用している.それによって自信を持って研究を進めることができる」と話している.
 微生物化学研究所では,世界の感染症対策において大きな問題となっている超多剤耐性結核菌に有効な新薬の開発にも取り組んでいる.「新たな発見を社会の役に立てるものへと育てたい」(渡邊主席研究員)という研究者たちの絆によって,目標を達成することに期待したい.



微生物化学研究所化学系所長 日本薬学会 会頭 東京大学名誉教授 北海道大学名誉教授 柴崎正勝先生

公益財団法人 微生物化学研究会
微生物化学研究所(微化研)
理事長:野本明男 住所:本部(東京都品川区)
日吉支所(神奈川県川崎市),沼津支所(静岡県沼津市)
http://www.bikaken.or.jp/


SciFinderについてのお問い合わせはこちら
TEL. 0120-151-462
www.jaici.or.jp

JAICI