レポート 2013 SciFinder Future Leaders in Chemistry



タイトル

今から 100 年以上前の 1907 年に化学分野の抄録誌「Chemical Abstracts」を創刊して以来,科学情報データベースをリードし続けてきた CAS.その CAS が世界中から優秀な大学院生および博士研究員(ポスドク)を招待し,科学情報の未来について語り合うプログラムが今年で 4 年目を迎えた.国籍も研究分野も異なる研究者同士が意見交換することで,科学情報データベースが目指すべき姿が見えてきた.


写真,CAS 本部前
世界 14 カ国から選ばれた参加者が CAS に集合
世界中の応募者から選ばれた 17 名

 最先端の科学研究において情報データベースが果たす役割が高まっている.特に化学および生命科学の領域では米国化学会 (American Chemical Society) の情報部門 CAS (Chemical Abstracts Service オハイオ州コロンバス) が提供する「SciFinder」は必須の存在といってもいい.
 科学の進歩とともに育ってきた CAS には,今後どのような進化が求められるのだろうか.その答えを探るために,未来の化学研究を担う若き研究者たちが語り合う場,それが 9 月に開催された「2013 SciFinder Future Leaders in Chemistry プログラム」だ.
 今年で 4 年目となるこのプログラムには,過去最大の 40 カ国約 160 の大学からの応募があり,最終的に選ばれたのは 17 名.CAS のマーケティング部門の最高責任者であるクリスティン・マッキュー氏は「様々な領域の優秀な応募者から絞り込む作業は大変でしたが,プログラムにとっては,ベスト中のベストといえるメンバーになりました」と誇らしげに話した.
 日本から参加したのは京都大学大学院薬学研究科の修士課程で天然物の全合成研究などに取り組む辻信弥さんだ.辻さんは,化学ポータルサイト「Chem-Station」に掲載された記事を読んで,プログラムに興味を持ったという.そして「同時期に開催される米国化学会に参加できることや,様々な企業・研究所の見学を通じて研究者同士の交流ができることに魅力を感じ応募しました」と話す.


写真,様子1 写真,様子2
 データベースについて白熱した議論が行われた
 オフの時間でも強まった参加者同士の絆
海外の学会で緊張のプレゼン

 プログラムは 9 月 7 日から 8 日間のスケジュールで実施された.参加者はプログラム前日に集合し,ウェルカムパーティなどを通じて参加者同士が打ち解ける環境づくりが行われた.プログラム 2 日目から 5 日目にかけて実施されたのは,辻さんも期待していた米国化学会秋季年会への参加だ.
 参加者は,興味のある研究者の発表を自由に聞くことができたが,今回は特別なイベントも用意されていた.それは学会会場で参加者がそれぞれの研究紹介を行うというもの.辻さんは「緊張しましたが貴重な経験となりました.特に発表スタイルが分野によって大きく異なるのに驚きました.合成化学ではスキームだらけのスライドになってしまうのですが,写真などでアピールできれば聴衆の印象も深くなる.自分もプレゼンのスキルも磨かねばと実感させられました」と話す.
 6 日目から 8 日目はオハイオ州コロンバスに移動.プログラム参加者と CAS スタッフとの間で科学情報データベースに対するディスカッションが行われた.辻さんは「参加者は非常に積極的で,活発な意見交換がなされました.SciFinder の新しい機能やレイアウトの試作版について意見を求められることも多く,集中してデータベースについて考えるよい機会になりました」と話す.
 コロンバスでは,CAS 本部やオハイオ州立大学,Battelle 記念研究所などの教育・研究機関の見学も行われた.CAS 本部では,データ登録を行うスタッフの多くが Ph.D. を持ったプロフェッショナルであり,彼らが膨大な論文・特許を読み込み,化学構造データや的確な抄録やキーワードなどの独自情報を追加することで,検索の利便性を高めていることに参加者たちは感銘を受けたようだ.
 辻さんは,今回のプログラムを振り返り「様々な国,文化,研究背景を持つ人々と交流することで,自分の研究を客観的に見つめ直すよい機会になりました.自分の今後の進路について考えるときも,出会った人々の考え方を参考にしたいと思います」と話す.
 プログラムが生み出した最大の成果は,これからの化学領域を背負うリーダーたちのグローバルなネットワークといってもいいかもしれない.そこから新しい時代の科学が誕生することに期待したい.


写真,米国化学会秋季年会の CAS ブース
 米国化学会秋季年会の CAS ブース

写真,深澤亮さん

京都大学大学院薬学研究科 辻 信弥さん
「次回の参加者へのアドバイスは,自分が話す英語の準備をしっかりしておくことです.私自身も留学経験が無いので不安でしたが,まずは自分の意見を正確に伝えることができれば,どんな国の人とも充実した時間を過ごせるのだと気づきました」

指導教員 竹本佳司教授からのメッセージ
「国際化の流れの中,学生には自らの研究や意見を世界に発信する力を養うことが求められています.CAS のプログラムを含め,さまざまなチャンスに積極的に挑んで欲しいと思います」

※辻さんへのインタビュー記事は化学情報協会のウェブサイトをご覧ください.
http://www.jaici.or.jp/SCIFINDER/jirei/sflc4.html

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