SciFinder ユーザーインタビュー

アリルシランを用いたシリカゲル表面修飾から世界初の研究が次々と展開

  • JAICI:先生の研究室ではどのような研究をされているのですか.
  • 嶋田先生:私のベースは有機合成化学ですが,無機化学との境界領域に興味がありまして,シリカゲルを扱う研究を主に行ってきています.
    こちらに赴任する前は京都大学の林民生先生の研究室で講師をしていたのですが,そこで 2003 年に JACS (Journal of the American Chemical Society) に発表したアリルシランを用いたシリカゲルの表面修飾についての研究 (*1) がその後の発展につながっています.
    乾燥材やカラムクロマトグラフィーの固定相にもよく使われるシリカゲルは,表面に有機化合物を担持して機能を付与することができます.その表面修飾の方法はこれまで,ケイ素 (Si) にアルコキシ基が 3 つついたトリアルコキシシリル基を使ったシランカップリング剤を用いるのが一般的でした.有機化合物の末端にトリアルコキシシリル基を導入し,シリカゲルの表面にあるシラノール基 (Si-OH) と反応させて Si-O-Si 結合を形成させるのです.ところが,このシランカップリング剤は簡単に加水分解するので,長期保存が難しく,また精製するためにクロマトグラフィーを使おうとすると,カラム内のシリカゲルと結合してしまい単離が難しいという問題がありました.
    そこで我々は,このアルコキシシリル基をアリルシリル基に替えた新しいシランカップリング剤を開発しました.アリルシリル基のついた有機化合物なら一般的な条件下では加水分解しないので長期保存が可能で,カラム内のシリカゲルと結合せず精製が容易です.精製したシランカップリング剤をシリカゲルに担持させるためには,トルエンの中に入れて加熱すれば,シリカゲル表面のシラノール基と反応して Si-O-Si 結合を形成します.しかも,脱離基はアリル基で気体プロペンとして反応系外に取り除かれるため,極めて純粋な表面を得ることができます.アリルシランを用いることで,従来のアルコキシシラン使用時の課題を解決し,短時間で簡便に,純度の高い有機基を担持することができるのです.
  • 研究内容の図1
    図 シリカゲル表面へのアリルシランの担持反応メカニズム
    弱酸性を示すシリカゲル表面のシラノール基のプロトンが,アリル基末端に付加することにより生じるβ―シリルカチオン中間体のケイ素原子に,シラノール酸素原子が求核的に攻撃しプロペンが脱離すると考えられる.
  • (*1 Shimada, T.; Aoki, K.; Shinoda, Y.; Nakamura, T.; Tokunaga, N.; Inagaki, S.; Hayashi, T., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4688-4689.

  • 論文投稿前には,この方法が本当に新規かどうか SciFinder を使って相当調べました.これだけよい機能を出せるのに今まで誰も気が付かなかったのか,にわかには信じ難かったですね.ほかの検索では漏れが心配で不安を払しょくできないのですが,SciFinder なら “ヒットしなければ新規” だと自信を持って発表することができます.研究者にとっては強力な武器ですね.投稿時に JACS のレフェリーから,我々も本当に新規かどうかよく調べたが確かに初めての報告のようだ,これはすばらしいとのコメントをいただきました.今の私がここにいるのは SciFinder なくしてはありえないと言っても過言ではありません.
    この研究は,豊田中央研究所の稲垣伸二先生らとの微細孔をもつメソポーラス有機シリカ開発に関する共同研究に発展し,有機薄膜太陽電池や人工光合成といったエネルギー問題解決につながる研究に貢献することができました (*2).現在は,モノリス型シリカを開発された京都大学の中西和樹先生と新たな共同研究を始めています (*3).すばらしい方々との出会いが今につながっていると感じています.
  • 研究内容の図2
    図 メソポーラス有機シリカの開発
  • (*2 戦略的創造研究推進事業 CREST (平成19年度~24年度)
      研究領域「ナノ界面技術の基盤構築」,「有機シリカハイブリッド材料のナノ制御構造と機能創出」 研究終了報告書 (PDF)
  • (*3 Moitra, N.; Kamei, T.; Kanamori, K.; Nakanishi, K.; Takeda, K.; Shimada, T. Langmuir, 2013, 29, 12243-12253.