SciFinder ユーザーインタビュー

2014年8月掲載 

薬学部は生命科学を幅広く学べる場
研究者として医療に貢献できる人材を育成


長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医薬品合成化学分野 
尾野村 治 教授

写真,研究室の集合写真

研究室の集合写真.尾野村先生 (前列中央)


企業で薬剤開発をされたご経験も生かし,創薬の場などで研究者として活躍できる人材を育成する尾野村先生に,SciFinderのご利用について伺いました.
4年制と6年制に分かれた薬学部で研究を担える人材輩出を目指す

  • JAICI:長崎大学薬学部の研究環境について教えてください.
  • 長崎大学
  • 尾野村先生:長崎大学薬学部は100年以上の長い歴史を有する学部です.2006年の学校教育法および薬剤師法改正で,薬剤師国家試験を受けるには6年間の学部教育が必須になりましたが,長崎大学ではこれまで薬剤師と研究者の両者を同等に育成することを基本方針としてきたことから,生命科学分野の研究者を目指す4年制課程(薬科学科)と薬剤師を目指す6年制課程(薬学科)を併置しました.
    私の研究室の学生はほとんどが4年制です.もともと研究志向で製薬会社や化学会社への就職を目指す学生が多かったので,学生たちの様子は制度改正前から特に変わってはいません.薬学部では,化学だけでなく生物学も深く学ぶ上に薬理学まで学びます.創薬にかかわる企業に入ったとき,ここで学んだ経験や,使った教科書がいつでも役立つ状態でいられることは,他学部に比べても大きなメリットがあると思います. 一方,薬剤師の活躍の場は臨床ばかりではありません.例えば製薬会社の品質保証部門などでは,創薬にかかわる評価や研究経験をしっかり持っており,なおかつ資格を持っているような人材が求められます.そのため,大学院で研究し博士号を取得した薬剤師の輩出も必要だと考えています.
    志を持って大学院で研究に取り組む学生が増えてくれるとうれしいですね.
  • JAICI:先生はもともと企業の研究者でいらしたのですね?
  • 尾野村先生
  • 尾野村先生:私は大学および大学院で合成化学を専攻し,その後化学メーカーに10年勤めました.その間,製薬会社との共同研究で医薬品のプロセス科学の研究や創薬に携わったのが今につながっています.原薬を合成したり,創薬の研究をしたりして,中には臨床試験がフェーズIIまで進んだものもあったのですが,どれも製品化には届きませんでした.一般の化学製品であれば,アイデアを出してから製品化までもっと短いスパンで進むのですが,製薬会社の方に聞けば,創薬に成功するには10数年もかかるとのこと.当たれば大きいのですがそこに至るまでは大変な業界ですね.
    そんな中,出身研究室の助教授だった先生が長崎大学薬学部に教授として赴任されて,長崎に助教授のポストで来ないかと声をかけていただきました.企業での生活も満喫していたのですが,もっと幅広い経験をしたいと思って大学に移ることに決めました.
  • JAICI:長崎大学薬学部と言えばノーベル化学賞を受賞された下村脩先生が思い浮かびます.
  • 尾野村先生2
    薬学部講義棟内にある「お薬の歴史資料館」にて
  • 尾野村先生:下村先生は奥様も長崎大学の同窓生で,ノーベル賞を取られる前から毎年長崎に戻って来られていましたね.とても人柄がよく偉ぶらない先生で,学内の皆に慕われています.下村先生は,戦後の混乱期で学校に通いたくても行き先のなかったとき,偶然,原爆で破壊された本大学薬学部の前身である長崎医科大学附属薬学専門部の仮校舎がご自宅の近くにできたそうです.縁あってそこに受け入れられることになって,化学者としての一歩を踏み出されました.自由にならないことばかりの時代の中で,自由に行える研究活動にはこだわり続けてこられたのだろうと思います.十分な器具がなかった時代でも創意工夫して手法を開発し,素晴らしい成果を上げられました.私たち後輩にお話をいただくときにはいつも,「始めたら最後まであきらめるな」とおっしゃいます.学内に下村脩名誉博士顕彰記念館があり,先生のノーベル賞関連の資料が展示されています.オワンクラゲを傷つけずに採取できるよう先生が手作りされた網なども展示しています.