SciFinder ユーザーインタビュー
2016年9月掲載
PatentPakでニーズの先を読み
「次の次」を見据えた製品開発へ
「次の次」を見据えた製品開発へ
東洋合成工業株式会社
感光材研究所 先進技術研究グループ 田下 真也 さん
感光材事業部 感光材研究開発部 感光材プロセス開発グループ 玉井 健太郎 さん
知財法務部 遠藤 美華理 さん
感光材研究所 先進技術研究グループ 田下 真也 さん
感光材事業部 感光材研究開発部 感光材プロセス開発グループ 玉井 健太郎 さん
知財法務部 遠藤 美華理 さん

左から遠藤さん,田下さん,玉井さん
感光材や化成品など,有機合成をベースにした製造開発を行っている東洋合成工業株式会社の皆様に,SciFinderおよびそのオプションとしてご契約いただいているPatentPakのご活用方法について伺いました.
SciFinderで知る先行技術を,未来の新事業の礎に
- JAICI:東洋合成工業の沿革や概要について教えてください.
- 広報ご担当:弊社は1954年の創業以来,独創的な視点を大切にしながら,有機合成をコアテクノロジーに据えた研究開発を行っています.創業当初は医薬品用化学製品の製造・精製をメイン事業に据えていましたが,時代のニーズに合わせた事業拡大を常に継続した結果,1981年から開始した感光材の製造事業が,現在では弊社の売上の半分以上を占めています.海外のお客様からもフォトレジスト用感光材分野でトップクラスのメーカーとして,高い評価をいただいています.常に「次の次」を見据えた研究開発に力を入れており,ここ数年では,特許出願件数も大幅に増加しています.感光性材料事業と化成品事業の2事業を柱とした体制をさらに拡大するため,新製品の創出や競争力の強化に向けた積極的な研究開発に取り組んでいます.
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東洋合成工業株式会社の感光材製品とその用途
東洋合成工業株式会社製品の感光材
- JAICI:SciFinderをどのように活用されているか教えてください.
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- 田下さん:私の所属する先進技術研究グループでは,感光材や化成品に関連する新しい反応プロセスの研究開発を行っています.開発したプロセスはお客様へのご提案に使用するため,トレンドのチェックは欠かせません.最近では環境負荷の少ないプロセスを求めるお客様が多いので,まずターゲットになる構造を決めたのち,先行技術をチェックして,そこに改善を加えた新しいプロセスの開発を行う,という方法で研究を行っています.先行技術の調査を行うために,SciFinderは欠かすことができません.弊社でSciFinderを導入したのは,SciFinder がリリースされて間もない2001年のことであったと聞いています.私は学生時代にほぼ毎日SciFinderを使用していたので,入社後も引き続き同じツールが使えるという安心感は大きかったです.上司からも,SciFinderの導入によって,多くの化学情報へ簡単にアクセスできるようになり,業務効率が上がったという話を聞きました.
- JAICI:SciFinderでよく使う機能はありますか.
- 田下さん:ターゲットになる構造について,SciFinderで部分構造検索を行い,先行技術を調査しています.得られた結果を保存する「Save機能」もよく利用しています.簡単に検索結果を再利用できるため,業務の効率化にもつながっていると感じます.
現在の部署には9人のメンバーが在籍しており,それぞれが独自のテーマに基づいた研究開発を行っています.私が入社した時期とほぼ同時にできた新しい部署で,「次の次」を想定した視点が常に必要とされています.そのためSciFinderを利用することで得られる過去の様々な知見は,私たちの研究の大きな礎になると感じています.これまでにない新しい技術を開発するという業務の内容上,困難に直面することも多いのですが,所属しているメンバーのアグレッシブさや個性に助けられていることが多いです.常に希望を持った上司の様子も,こちらの意識を前向きなものに変えてくれています.
PatentPakを使ったニーズの先読みで,研究のモチベーションアップ
- JAICI:御社ではリリース直後から PatentPak を導入していただいています.PatentPak導入の経緯について教えてください.
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- 玉井さん:私の所属する感光材プロセス開発グループでは,主にお客様から依頼のあった物質に関する材料開発を行っています.お客様としてはフォトレジストメーカーさんが多くいらっしゃいます.他の特許を侵害したプロセスでの材料開発を避けるため,研究の下準備として,PatentPakを用いた特許明細書の調査は欠かせません.弊社で PatentPakが導入されたのは私が入社した年と同じだったため,私が研修を終えて現在の部署へ配属された時には,すでにPatentPakを使える環境が整っていました.それ以前には,複数のツールをまたぐ形で特許明細書のチェックを行っていたと聞いていますが,明細書の確認に現在の3~4倍は時間をとられていたそうです.PatentPakを利用すれば,求めている物質に関する情報をスムーズに得ることができて業務の効率化が実現できると知ったため,導入決定に至ったと聞きました.私自身も,最低でも週に1度はPatentPakを使用しているため,PatentPakなしに現在の業務を続けることはかなり困難であると感じています.
- JAICI:PatentPakで特に便利だと感じる機能はありますか.
- 玉井さん:お客様からご依頼をいただいた物質に関して検索をかけた際,特許明細書によっては,本文中に数百の物質が記載されています.それらをひとつずつ自分の目で確認するのは多くの時間と労力が必要とされます.ところが,PatentPakのViewer機能であれば,目的化合物が明細書のどの位置に記載されているのかひと目でわかるため,とても重宝しています.うっかり見落とす心配もないため,精度の高い調査結果を得ることができます.
私が現在所属しているグループでは,高分子材料や低分子材料などのチームに分かれ,それぞれでお客様からのご依頼を担当しています.お客様からは,ご依頼いただいた材料に関して,具体的な用途を伺えないことも多いのですが,PatentPakを利用することにより特許明細書中での物質の記載位置が容易に分かり,その特許の内容を基に物質の用途を予測することができます.用途の可能性を知ることで,材料開発のモチベーションにも繋がります.
私も学生時代には高分子を扱った研究をしていましたが,入社するまで感光材の研究に携わる機会がなく,具体的にどのような使われ方をする材料なのかイメージしづらいこともありました.自分が携わった材料の様々な用途を知ることで,世界に役立つ仕事をしているという実感を強く持てるようになりました. - JAICI:PatentPakでは,海外の特許明細書も閲覧することが可能ですが,そうした機能もご利用いただけていますか.
- 玉井さん:日本語の明細書はもちろん,英語で書かれているものも読むようにしています.しかし,中国語や韓国語などに関しては,言語の壁もあり,検索でヒットしたという記録は残すようにしているのですが,全体をきちんと読むには至っていません.
- JAICI:PatentPakを使うと,特許明細書をpdf形式でダウンロードすることができます.ダウンロードしたpdfファイルは,テキスト検索やコピーペースト機能を行うことが可能なので,Viewer機能でヒットした物質が記載されている段落を翻訳ツールにコピーペーストすることで,必要な個所だけを読むことができます.ぜひお試しください.
- 玉井さん:今まで読むことのできなかった明細書から,次の開発のヒントがもらえるかもしれません.ぜひやってみます,ありがとうございます.
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PatentPak Viewer
物質情報と明細書を同一画面で確認できます.
SciFinder とPatentPakで,高い精度の業務を実現させる
- JAICI:知財部門では,どのようにSciFinderを活用されていますか.
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遠藤さん:私が入社したのはおよそ2年前になります.以前知財関連の仕事や化学関連会社に勤めていた自分の経歴と,ちょうど同じ時期に知財関連の部門を拡大しようとしていた弊社の方針が幸運にもマッチして,入社に至りました.現在,知財法務部は6人のメンバーで,自社の知的財産に関する特許申請業務や特許調査を行っています.
実は,知財法務部でSciFinderを使い始めたのは今年(2016年)に入ってからです.もちろん存在は知っていたのですが,特許調査に活かすという考え方がなく,それまで利用には至っていませんでした.しかし,使い始めてみると非常に便利で,特にパテントクリアランス業務においては欠かさず利用しています.具体的には,公知物質かどうかを調べるために,SciFinderの構造検索とマルクーシュ構造検索を併用しています.特許検索の専用ツールで検索を行うと,明細書の中で画像表示のみで開示されている化合物に関しては検索ワードでヒットさせることが難しく,検索結果に漏れが生じる可能性がありました.SciFinderで検索すればそれらもすべて拾えるため,調査の精度が上がりました.他の特許検索ツールを利用することもありますが,そのための検索用キーワードを検討するためにも,SciFinderでの検索は欠かせません. - JAICI:PatentPakのご利用はいかがですか.
- 遠藤さん:PatentPak のViewer機能をよく使っています.少なくとも数百件,多くて数千件にのぼる明細書の内容について,PatentPakを導入するまでは,すべて自分で目を通して目的の化合物を探す必要がありました.PatentPak導入後は,どの場所に目的の化合物が記載されているかすぐにわかるようになりました.特許調査以外の業務も多くある中で,PatentPakによる業務の効率化には,非常に助けられています.また,外国への出願も行う関係上,日本やアメリカだけではない,幅広い国の特許情報を網羅していることも,PatentPakの利用のメリットに感じています.
- JAICI:今後の展望についてお聞かせください.
- 田下さん:私の行っている研究は,将来の事業化を見据えた,新しい東洋合成らしさを求めていくものです.加えて,これからの地球環境について考えた場合,市場のニーズとしては,よりエコで効率的なプロセスが求められていると感じます.SciFinderを利用することで,これまで世界中で行われてきた様々な研究の成果を土台とした,より新しく,より社会に必要とされるプロセスの開発が可能になると思います.これからも,会社を通じた社会貢献を念頭に置きながら,「次の次」を見据えた研究に取り組みたいと考えています.
- 玉井さん:私の部門では,お客様からご依頼のあった物質の開発に取り組んでいますが, PatentPakの導入で,SciFinderを通じて特許情報へ簡単にアクセスできるようになってから,よりお客様のニーズへの理解を深められるようになりました.どのような用途でお使いになる材料なのかがわかれば,ご依頼のスペックにとどまらず,よりお客様のお役に立つ,想定されていた以上の機能を持つ製品をご提供することも可能となります.今後も,PatentPakをうまく使いながら,お客様の希望の先を行くような製品の開発に取り組みたいです.
- 遠藤さん:2014年ごろから,感光材の中でもナノテクノロジーやEUV(Extreme Ultraviolet:極端紫外線)等の先端技術開発に注力し始めたことで,弊社の特許出願件数は大幅に増えています.それに伴い,外国出願に関する業務がかなりの割合を占めるようになっています.今後も幅広い国の特許情報を網羅するSciFinder やPatentPakを有効活用するともに,まだ知らない機能がありそうなので,部署や研究所ごとに講習会を開くことで,更なる検索精度の向上や業務の効率化に繋げていければと思います.
- JAICI:本日はどうもありがとうございました.

本社写真

東洋合成工業株式会社
所在地:東京都台東区
1954年に医薬品用化学製品のメーカーとして創業.有機合成技術をベースとしながら,時代のニーズに合わせて機能性化学分野へと事業領域を拡大.1981年に千葉県市川市の工場で感光材の製造を開始し,現在は感光性材料事業および化成品事業の2事業を柱としながら,最先端技術の発展に寄与している.
ウェブサイト
http://www.toyogosei.co.jp/