MethodsNow ユーザーインタビュー

2017年11月掲載 

分析化学が人間の感度に挑む
ノイズのない検索結果が魅力のツール

株式会社伊藤園 生産本部 中央研究所
副所長 兼 研究一課長 衣笠仁 さん
研究一課 一谷正己 さん
研究二課 木口屋沙織 さん

集合写真
左から木口屋さん,衣笠さん,一谷さん

緑茶飲料をはじめコーヒー・野菜飲料,リーフ製品(茶葉)の開発販売で知られる,株式会社伊藤園の皆様に,MethodsNowのご活用方法について伺いました.
緑茶飲料の開発から「おいしさ」の成分研究まで幅広く担う

  • JAICI:伊藤園の概要と研究内容について教えてください.
  • 衣笠さん写真
    衣笠さん
  • 衣笠さん:弊社は1966年にお茶を専門に取り扱うメーカーとして設立されました.当初はパック茶を主に取り扱っていましたが,10年もの開発期間を経て1985年に発売されたのが,弊社の代表的製品である「お~いお茶」の前身である「缶入り煎茶」です.その翌年にあたる1986年に現在の中央研究所第一研究棟が完成しました.これは伊藤園では初めての研究所設立となります.当時は緑茶ドリンクの品質管理をメインに,緑茶飲料の新規開発や,パック茶,粉末茶,ティーバッグの開発などを行っていました.そこから徐々に枝葉を広げ,現在は,「おいしさ」の研究や,お茶に含まれるカテキンやアミノ酸といった成分を活かす機能性食品の開発を行っています.弊社の大きな強みとして,契約農家様などでお茶を栽培しているため,目的の味に合わせた高品質な原料の調達が可能であることが挙げられます.飲料以外にも,繊維の中にカテキンを入れ込んで抗菌消臭加工を行うカテキン染めという技術を開発するなど,様々な研究を行っています.
  • 一谷さん:私の所属している研究一課では,主に「おいしさ」に関わる分析や技術開発を行っています.具体的には,お茶やコーヒーなど,天然物の中から「おいしさ」に関与する成分の分取や精製,定量分析,安定性試験などを行っています.化学的な分析にこだわりすぎず,官能的な評価を行う品質管理部門とも「おいしさ」の評価方法に関する部門の垣根を越えた共同プロジェクトに取り組んでいます.
  • 木口屋さん:研究二課では主に食品の機能性をターゲットに研究を行っています.カテキンやテアニンといったお茶の成分に関して研究をしているグループと,その他の食品成分の機能性について幅広く研究しているグループに分かれており,ヒトを対象にした試験を取り扱っています.研究の成果は,特定保健用食品などの製品に結びついています.
  • 伊藤園の商品
    伊藤園の製品例
    EGCGの分子構造
    エピガロカテキンガレート (EGCG) [CAS RN: 989-51-5] の分子構造


目的成分の分析手法はMethodsNowですぐ分かる

  • JAICI:SciFinder を導入された経緯について教えてください.
  • 一谷さん写真
    一谷さん
  • 一谷さん:SciFinderが弊社に導入されたのは2005年です.当時,飲料業界では特許に関する出願形態に変化が起こり始めていました.それまでは製造方法に関するような,いわばざっくりした内容の特許が多かったのですが,2000年代に入ってからは,化学的パラメータを使ったパラメータ特許というものが急激に増えたのです.そこで,他社の動向を含めた先行事例を多く調べ,なるべく弊社にとって優位な内容の特許を構築する目的でSciFinderを導入しました.
  • JAICI:MethodsNow の導入にはどのようなきっかけがあったのでしょう.
  • 一谷さん:MethodsNowに出会ったのは機能性表示食品の認可が開始されたころでした.社内では製品企画部署から様々な機能性表示食品の企画が出されていたのですが,製品化のためには機能性成分の定量が必要となります.そのために様々な成分の分析方法を知る必要があり,SciFinderで探し当てた文献を外部サービスで取り寄せたものの,実際に目を通してみると求めているものとは違った,というようなことが多々あり,業務に遅れが出ていました.そうした悩みを化学情報協会の方に相談したところ,勧められたのがMethodsNowです.分析手順や使用機器,試薬やバリデーションデータなどの情報を一覧で確認でき,さらに他文献との比較もできるということだったので,すぐに導入しました.
    実際に使用してみると,分析手順や使用機器,試薬などの情報が一覧で得られ,さらに,中国語やポルトガル語などの文献も英語翻訳されていることに驚きました.また,試薬については,SciFinder で提供業者の情報,注文番号や価格情報を得ることができます.MethodsNow を使用することにより,業務の効率が体感で5倍ぐらいスピードアップしました.余計な文献を取り寄せる手間やコストも削減できました.
  • MethodsNow の検索,レコード例

    MethodsNow
    - キーワード検索やカテゴリー検索,絞り込み機能により柔軟な検索ができます.
    - 分析手法に関する物質の詳細,出典,使用機器,手順など詳しい内容を確認できます.

    MethodsNow の検索結果の比較画面

    MethodsNow
    - 詳細な手法,バリデーションを分かりやすく表示確認できます.


  • JAICI:具体的にどのような場面で使われているか,エピソードがあれば教えてください.
  • 一谷さん:MethodsNowを導入したころ,シソ由来のルテオリンを使った製品の企画が持ち上がったことがありました.この場合,私たちの仕事は「シソ由来のルテオリン」について分析を重ね,最適な原料のスクリーニングや製造方法に関するノウハウを蓄積することです.SciFinderで検索をしていても,なかなか「シソ」と「ルテオリン」が結びついた情報に辿り着くことができず,序盤から業務が難航していました.そこで紹介されたMethodsNowを使ってみると,「シソ由来のルテオリン」を分析する方法に一発で辿り着けたのです.余計なノイズを取り払って,必要な情報にすぐアクセスできる,便利なツールだと感じました.
    また,コーヒー飲料の分析を担当することになった際,ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)で香りの分析をする必要がありました.私はそれまで高速液体クロマトグラフ(HPLC)や液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)の使用が多く,GC-MSについては知識や経験が不足していたのですが,MethodsNowを使い分析方法をすぐに知ることができました.それにより,コーヒーの香り成分が焙煎・粉砕・抽出・飲料化のそれぞれの段階でどのような挙動をするか,効率的に分析する方法をスピーディに構築することができました.
  • 木口屋さん写真
    木口屋さん
  • 木口屋さん:新入社員のころ,コレステロールの研究で失敗続きだったことがありました.目的としている成分の分析方法や分析条件が全く定まらず,試行錯誤にかなりの時間を割いていましたが,ちょうどそのころSciFinderの講習会に出る機会に恵まれました.講習会の中で MethodsNowの紹介があり,その場で試用しました.すると,すごく簡単に自分の求めていたものを見つけることができて,もっと早く知っていれば,と強く感じたことを覚えています.私のように,まだ分析の経験が浅くても必要な情報を簡単に入手できるツールなので,今ではMethodsNowにとても助けられています.
  • 一谷さん:品質管理部門でもMethodsNowは積極的に使っているようです.農薬の分析はもちろん,製品にイレギュラーが起こったとき,例えば普段と変わった味や匂いがするときに,異味・異臭に関する分析方法を検索して,どのような理由でそうした変化が起こったか突き止めることで,品質上の問題解決につなげていると聞いています.

  • 人間の感度に近い「おいしさ」の分析を求めて

    • JAICI:伊藤園の「おいしさ」へのこだわりについて教えてください.
    • 集合写真2
    • 衣笠さん:常にお客様の要望に応えつつ,飽きのこない味を提供することが我々の使命であると考えています.そのために,代表的製品である「お~いお茶」も,新しい原料や新しい製造方法を導入することで,毎年のように味をリニューアルしています.容器のサイズや種類によって味を変えていることはあまり知られていないかもしれません.例えば,2リットルなどの大容量ペットボトルに入っている製品は,喉が渇いているときにスッキリと飲めるよう喉越しのよい味にしています.一方,小さなサイズのものはお弁当に合うような味にするなど,常にお客様の飲むシーンのことを考えた製品作りに取り組んでいます.
    • 一谷さん:最終的に製品を飲むのは分析装置ではなく人間であるということはいつも念頭に置いています.実は,人間ほど瞬時に様々なものを感知して分析できる“分析装置”はありません.香りや味をそれぞれ分析する装置はあっても,感度は人間に及ばない.我々が仕事をしているお茶の世界では,今でも「茶師」という特別に感度の優れた職人が活躍しています.弊社でも専門の茶師が,分析装置では検出することのできないような味や香り,舌触りなどの観点から様々な製品の企画・提案・製造を行っています.我々の持つ現在の分析技術ではまだまだそうした製品の特徴を数値として捉えることができていないのが実情です.そうした部分に挑んだ分析手法を構築することが,これからの大きな課題です.そうして得られた結果を,製造方法や栽培方法などにフィードバックすることで,もっとおいしい製品をお客様にお届けすることができると考えています.
    • JAICI:皆様の今後の研究にもMethodsNowを活用していただければうれしいです.
    • 衣笠さん:伊藤園の研究所が発足した当時はMethodsNowのように便利な検索ツールがありませんでしたから,分析をひとつするのにも,国の試験場へ赴いて,自分たちで延々と調べて,考えて,やっと分析条件を決めて装置を動かしていました.今は便利なツールが出てきた反面,研究者がそれに頼りきりになってしまうのもどうかという気持ちもあります.検索して得られた結果に対して,自分でさらに考察を重ね,よりよい実験方法を考えることができれば,研究はさらに進歩すると思います.
    • 一谷さん:確かに,情報は入手できても,それだけでは実験がうまくいかない例はたくさんありました.MethodsNowでは分析化学者にとっては常識とされる情報が省かれている場合もあるので,専門外の領域で私にそれを読み取る力が足りなかったこともあります.優れたツールの力を十分に活かすためには,それを使用する人間のほうにも,データの“行間”を読む能力を高めるなどスキルアップへの努力が求められると感じています.
    • 木口屋さん:企業の研究は時間との戦いになることも多いので,求めている情報だけを簡単に得ようとしがちなのですが,先輩方のように,ただ必要な部分を読むだけではなく,もっと包括的に情報を捉えることができるようになれたらいいなと思います.
    • JAICI:本日はどうもありがとうございました.


    株式会社伊藤園本社写真
    本社写真
    株式会社伊藤園
    〒151-8550
    東京都渋谷区本町3丁目47番10号

    1966年に設立.製品開発の理念として「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」の五つのコンセプトを掲げ,代表的な製品である「お~いお茶」をはじめとした様々な清涼飲料を積極的に展開する総合飲料メーカー.

    ウェブサイト
    http://www.itoen.co.jp/

    MethodsNow logo

    MethodsNow は分析手法や反応手順を調べられるツールで,詳細な分析手順,測定機器,検証データなどを調査・比較できます.SciFinder のオプションとして,あるいは,スタンドアローン版としてご利用いただけます.

    MethodsNowについて
    http://www.jaici.or.jp/casproducts/methodsnow/index.html