レポート SciFinderユーザーミーティング



ユーザーと二人三脚で常に進化を続けるSciFinder

CAS(米国化学会情報部門)が提供する,研究開発のためのツール“SciFinder”.そのユーザーミーティングが,2012年7月,東京と大阪で開催された.両会場とも,CASの開発担当者からSciFinderの新機能と今後の開発方針について説明があり,企業と大学のユーザーによる活用事例の講演が行われた.


写真,ミーティングの様子

 CASは,学術文献や特許はもとより,化学物質の構造や物性,化学反応の情報をすべて収集し,データベースとして体系化している.その一方,膨大なデータベースのなかから,ユーザーが必要とする情報を引き出すためのツールを開発している.なかでもSciFinderは,これ1つで物質の新規性の確認,合成ルートの探索,最新の特許情報の探索などが行えるマルチなツールだ.研究開発の戦略を立てる上で重要な情報をすばやく正確に把握できることが歓迎され,日本にも企業や大学を中心に多くのユーザーがいる.
 今回のユーザーミーティングは,こうしたユーザーを対象として開かれ,CASからプロダクトマーケティングマネージャーであるジョナサン W.テイラー氏とSciFinderの開発責任者であるカーク C.シュウォール氏が来日した.テイラー氏はSciFinderの歴史を概観した上で最新の機能を解説し,シュウォール氏はSciFinderの開発体制と今後の開発方針について語った.
 さらに,ユーザーを代表して,東京では名古屋大学准教授の山口潤一郎氏とアステラス製薬の宮内洋一氏が,大阪では岡山大学教授の神崎浩氏と石原産業の小林伸行氏が,大学での研究・教育や企業での研究開発にあたってSciFinderをどのように活用しているかを紹介した.

ユーザー志向で進化し続けるSciFinder

 SciFinderは1995年にリリースされて以来,新機能の追加を頻繁に行ってきた.当初は文献データベース,次いで化学物質データベースを対象としていたが,ここ近年は化学反応データベースを検索する機能が充実し,合成ルートの検索・設計に寄与することが最大の目的となっている.
 「私たちは,リリース当初から培われてきたユーザーとのパートナーシップにいつも感謝しています.ユーザーの皆様からいただいた情報を,皆様の役に立つ形でお返しすることが私たちの責務です」とテイラー氏が講演で語ったとおり,SciFinderはユーザーのニーズに応えるために,このような進化を遂げてきたのだ.
 実際,この1年間にも,生物活性情報の提供(Bioactivity Indicator / Target Indicator,囲み参照),物性値検索,反応の実験項情報の収録拡大など,ユーザーの利便性の向上やワークフローの改善に役立つ多くの機能が追加された.これらの機能は,今回の企業ユーザー講演でも,「社内アンケートで『役立つ』の回答が多かった」と紹介されたように,好評を得ている.

コンテンツがあってこそ生きる機能

 そして,これからもSciFinderには新しい機能が次々に加わる.例えば,2012年中に追加予定の新機能として,反応のグルーピングがある.これは1180万の1段階反応を600の反応グループにマッピングするもので,反応検索の膨大な回答集合を管理するのに役立つと期待される.
 どんな機能をいつ加えるかは,どのように決定されるのだろうか.シュウォール氏は講演で「私たちは,今回のようなユーザーミーティングのほかに,各種アンケート調査,世界各国の若手研究者を対象としたSciFinder Future Leaders in Chemistry Program,顧客訪問などを通じて常にユーザーのニーズを収集しています.これらのニーズと開発に必要なプロセスをにらみ合わせ,最も大きなインパクトと最も高い価値を生み出せるように開発の優先順位を決めています」と説明した.
 しかし, SciFinderのさまぎまな機能は,コンテンツがあってこそ生きるものだ.「CASのデータベースは専門家が情報の質を吟味して編集しており,包括性,速報性だけでなく信頼性を維持しています」とテイラー氏.一方,シュウォール氏は,「SciFinderのユーザーからのフィードバックで,新たなコンテンツが開発されることもあります.反応のグルーピングはその好例です」と,ツール開発とコンテンツ開発が密接に関係していることを強調した.
 各講演後の質疑応答では,SciFinderの機能について,日々利用しているユーザーならではの要望や質問が多く寄せられた.こうした声を採り入れ,SciFinderはさらに進化していくことだろう.

SciFinderの物質データに2種類の生物活性関連情報を追加

Bioactivity_Indicator
SciFinderの物質データに新たに2種類の生物活性関連情報が追加されました.


 これまで注目する物質の生物活性などを調べるためには,物質検索後に文献を検索し,その文献中で個々に作用を確認していく必要がありました.新たに搭載されたBioactivity IndicatorとTarget lndicatorを利用すると,特定の物質の生物活性や作用する受容体・酵素などを手早く把握できます.(画面見本参照)
 この機能を利用すると,医薬品として既に知られている作用はもちるん,別の生物活性の可能性もあわせて調べることができます.またSciFinderの特徴である,強力な構造検索機能と組み合わせると,ある分子骨格群が有する特徴的な生物活性の調査も可能です.医薬品の分子設計には欠かせない機能です.

 

写真

カーク C.シュウォール (写真左)
ディレクター
SciFinder プロダクトディベロプメント


データベース作成部門を始め,マーケティング,新製品開発部門など30年の間にCASのほぼすべての部門を経験.SciFinderは1997年の開発当初から担当.SciFinder製品開発チームの最高責任者.

ジョナサン W.テイラー (写真右)
マネージャー
SciFinder プロダクトマーケティング


マーケティングのバックグラウンドを持った化学の専門家.CASでは開発部門からスタートし幅広い経験でSciFinderのマーケティング戦略を担当するマネージャー.過去SciFinderのユーザーミーティングで何度か日本を訪れており,大の親日家.



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