化学情報協会

CAS SciFinder Discovery Platform™ (科学・ライフサイエンス情報検索ソリューション)

毒性のざっくり把握に CAS Formulus と CAS Chemical Compliance Index を使ってみた

コラムでは、CAS SciFinder のユーザーの方を対象に、検索に関するお役立ち情報や、ちょっとした豆知識を提供します。本稿では CAS SciFinder と連携して使える「CAS Formulus」と「CAS Chemical Compliance Index」を使った事例を紹介します。

ある朝、EDTA が気になった

ある朝、何気なく、手元にある歯磨き粉やら、化粧品のボトルを眺めていたら...

 

ここにも ⇒

 

 

ここにも ⇒

EDTA が使われています!

 

EDTA (Ethylenediaminetetraacetic acid:CAS 登録番号 (CAS RN®) 60-00-4) は化粧品や洗剤などの身近な日用品にも用いられているキレート剤の代表格で、こんな構造をしています。医薬部外品の表示名称は 「エデト酸(Edetic Acid)」です。 

 

そこで、EDTA に刺激性や毒性がないか、他にどのような製品に使われているのか CAS SciFinder  Discovery Platform で調べてみたら、意外に CAS Formulus/CAS Chemical Compliance Index が便利だったので、その事例をご紹介します。

はじめは CAS SciFinder で調査をスタート

まず、CAS SciFinder で検索をスタートしました。

 

化学物質の詳細表示画面で、ピクトグラムや GHS Hazard Statements を見ると、次のような情報が得られました。濃度・対象によっては何かしらの試験報告がありそうな予感。

 

H320 眼刺激
H361 生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い
  H361d 胎児に損傷を与える疑い
  H361f 生殖能力に悪影響を与える疑い
  H361fd
H372 長期にわたる、または反復ばく露による臓器の障害
H402 水生生物に有害
H412 長期継続的影響により水生生物に有害

 

CAS SciFinder の GHS 分類は、各国の情報が統合されて表示されるため、日本については、SDS 作成のために厚生労働省や NITE が情報提供しているサイトを閲覧するのがおすすめです。

 

一方で、Toxicity データは1件で、ヒトに対するデータはありませんでした。

 

このような場合、「他に文献はないか」と考え、CAS SciFnder で Reference 検索を行うのが通常の手法です。しかし、今回は 132,000 件以上の文献があります。これだけ件数が多いと、この後 Substance Role の Adverse Effects 等で絞り込んだとしても、目を通せるぐらいの件数に絞り込むのに苦労しそうです。

 

そこで、CAS Formulus で EDTA の情報がないか見ることにしました。

CAS Formulus とは

CAS Foumulus は CAS が独自に集めた医薬品・農薬・化粧品の製剤・配合情報を提供する検索ツールです。CAS SciFinder Discovery Platform の一製品ですので、CAS SciFinder のログイン ID をお持ちであれば、どなたでもアクセスできます。

 

『知らなかった!』『自分もアクセスできるの???』という方は、次のサイトで CAS SciFinder のログイン ID とパスワードを入力してみてください。

 

https://formulus.cas.org/

 

CAS SciFinder にログインしている状態であれば、左上の ︙ マークを押して表示されるメニューで CAS Formulus を選択すると切り替えできます。

CAS Formulus の Toxicity (毒性情報)

CAS Formulus の Ingredients 検索画面で、EDTA を検索し、詳細を表示した画面がこちらです。

 

ページ上部には、化学物質の基本情報に続いて、Commonly Used As... (用途) が表示されます。キレート剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色材料など多くの用途があることがわかりますね。

 

ちなみに、オレンジ色の▲のマークがついているのは、米国薬局方 (U.S. Pharmacopeia) 由来の機能・役割の情報であることを示しています。

 

Toxicity (毒性) 情報は、上から3番目ぐらいのブロックに表示されます。

 

CAS Fourmlus の毒性情報は、CAS SciFinder と同一ではなく、規制当局によって報告された毒性や環境毒性などのデータを収録しています。

 

必ずしも、CAS SciFinder と比較して毒性データが多く収録されているわけではありませんが、今回は毒性情報が 9 件、うち 1 件はヒト対象のデータも簡単に得られました。

CAS Chemical Compliance Index  の Toxicity (毒性情報)

続いて、CAS Chemical Compliance Index です。

 

規制当局によって報告された毒性や環境毒性が収録されているので、CAS Formulus とまったく同じ結果になる場合もありますが、今回は 31 件の毒性情報が得られました。

まとめ

CAS SciFinder にはない毒性・規制情報が CAS Formulus または CAS Chemical Compliance Index で得られる場合があります。

 

CAS SciFinder Discovery Platform の利用者であれば、CAS SciFinder だけでなく、CAS Formulus または CAS Chemical Compliance Index を利用できます。ログイン、検索、コンテンツについてご不明な点がありましたら、化学情報協会のヘルプデスク宛てにご連絡ください。

 

 

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この記事は CAS SciFinder の検索方法の提供ではありません。CAS SciFinder を使った情報検索の参考になるような収録データに関する情報や、ちょっとした関連知識を提供する記事です。CAS SciFinder の検索方法や操作については以下のページをご覧ください。

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掲載日 2025 年 5 月 23 日