8月14日は専売特許の日!
日本における近代的な特許制度の始まりは、1885年(明治18年)4月18日に公布された「専売特許条例」によって幕を開けました。この日は、現在「発明の日」として記念されており、日本の技術革新と知的財産保護の歴史において重要な節目となっています。
そして、初代の専売特許所長を務めたのが高橋是清です。
日本特許第 1 号が 1885 年 8 月 14 日に誕生
4 月 18 日の発明の日から約 4 ヶ月後の 1885 年 8 月 14 日、日本で初めての特許が付与されました。
記念すべき第一号特許を取得したのは、彫刻家・漆工芸家であった堀田瑞松氏です。
彼の発明は「堀田式錆止め塗料およびその塗法」というもので、鉄船の船底に生漆を主成分とした船底塗料を塗ることで錆を防ぐ技術でした。
漆、柿渋、生姜など、いかにも日本的な成分を使った素晴らしい発明です。
JPC 000000001 を見てみよう
それでは日本特許第 1 号を見てみましょう。J-PlatPat の特許・実用新案番号紹介/OPD で、特許番号 (B) に 1 を入力し、照会をクリックすると、特明1がヒットします。

* JPC1、堀田瑞松 (J-PlatPat (https://www.j-platpat.inpit.go.jp/ より 2025 年 8 月 14 日取得)
140 年前の特許は、『縦書き』『カタカナ』『平民』 と驚かされるポイントが満載です。特許期間も『十五箇年』で、現行法とは異なることが分かります。
特許取得とその後
堀田氏の開発した防錆塗装は、横須賀造船所での実験を経て、海軍省から高い評価を受け、1887 年には海軍に正式に採用されました 。さらに、日本海軍だけでなく、ロシア海軍の艦船など他国にも採用され、国際的にも高く評価されました。
さらに、堀田氏は防汚塗料の開発にも取り組み、1890年には特許第918号「介藻防止漆」を取得。
1905 年から 6 年に渡る米国滞在中には、米国特許も取得しています。
CAS SciFinder の著者名(発明者)検索とクレーム
それでは、堀田瑞松氏の特許を CAS SciFinder で検索してみましょう。References 検索の Advanced Search Field で Author/Inventor Name を選択し、右の入力ボックスに Hotta, Zuisho と入力します。
姓,名 の順に入力すると、途中で候補が表示されますので参考にしてください。

このように検索すると、2 件の特許がヒットします。
US916869 "ANTIFOULING AND ANTICORROSIVE COMPOSITION."
US916870 "COMPOSITION FOR PREVENTING THE CORROSION AND GALVANO-ELECTRIC ACTION OF METALLIC SUBSTANCES."
いずれも出願日 1908 年 8 月 21 日、登録日 1909 年 3 月 30 日です。明治時代に、米国特許を取得しているんですね。

次に US916870 を表示した例を示します。2025 年 8 月の強化で Claims の項目が追加されたので、漆 (Japanese lacquer gum) を使った船底塗装の発明であることがすぐにわかります。

日本特許第 1 号の意義
日本で特許制度が誕生した背景には、明治維新による近代化政策と、欧米列強との不平等条約の改正交渉という二つの大きな流れがありました。
特許第1号は、単なる「最初の特許」ではなく、日本が近代国家として歩み始めた象徴であり、古代から日本に息づいていた漆塗の伝統と革新が交差するその瞬間に、堀田瑞松氏の知恵と努力が刻まれたものです。
掲載日 2025 年 8 月 14 日