化学情報協会

CAS SciFinder Discovery Platform™

化学物質の名称の話

コラムでは、CAS SciFinder のユーザーの方を対象に、検索に関するお役立ち情報や、ちょっとした豆知識を提供します。本稿では CAS SciFinder に収録される化学物質の正式な名称についてご紹介します。

CAS が付与する化学物質名称 CA Index Name

CAS SciFinder の化学物質には 「本名」 がある

CAS SciFinder で化学物質を表示すると、普段使っている名称とは違う、複雑な名称が表示されるなと思ったことはありませんか?

 

そう。分子式 C8H10N4O2 の下。

1H-Purine-2,6-dione, 3,7-dihydro-1,3,7-trimethyl- (9CI, ACI) のところです。

 

上図で赤い下線を引いた名称が、CAS が付けた正式な名称です。この名称は CAS が定めた化合物命名法「CA 命名法」に則った名称で、CA Index Name (CA 索引名)と呼ばれています。

Point:CAS SciFinder では、CA 索引名が化学物質の「正式名称」

唯一無二の名を決めるルールが 「CA 命名法」

CAS では、1965 年に CAS 登録システムを導入し、化学物質の構造を同定して、その物質に唯一の番号 (CAS RN (CAS 登録番号)) を付与する作業を始めました。CAS RN が CAS の出版物に載るようになったのは、1966 年からです。

 

CAS RN が登場するまでの期間 (1907~1965 年) は、化学物質の索引に名称を用いていました。

しかし、CAS SciFinder の前身である Chemical Abstracts の号末索引 (Issue Index) に収録されている化学物質は、多くの場合2つ以上の名称をもっています。例えば spectinomycin は actinospectacin としても知られています。また別の問題点として、AQ110 のような商品名がありますが、これも冊子の索引見出し語としては不適切です。

 

化学物質を一貫した方針で索引するため、CAS では IUPAC (国際純正応用化学連合) が採用している命名法のルールを発展させて、各物質にはただ一つの名称しか与えられず、また各名称はただ一つの物質しか表さないという非常に厳密な名称を開発しました。

 

この Chemical Abstracts (CA) 化学物質索引ための命名法が CA 命名法です。

Point:CA 索引名を決めるルールが 「CA 命名法」

化学物質名についてる "○○CI" の意味

CA 命名法は年代によって変遷があり、Collective Index の時期で表されるのが常なので、たとえば 1972-1976 年の時期に定められた命名法で付与された名称なら、名称のあとに (9CI) と記載されます。

 

それでは、あらためて Caffeine の CA 索引名を見てみましょう。

名称の最後に (9CI, ACI) とカッコに入った記述があることから、これが 9CI 命名法で付与された CA 索引名であることが分かります。

 

ちなみに、この「9CI 命名法」が一番長く用いられている CAS 命名で、多くの物質がこの命名法で名づけられました。

この例では、ACI という記載も見られます。ACI は Current 、つまり「最新の命名法で付与された名称」という意味です。

 

CA 索引名を決める基本的なルールと手法は、Index Guide の Appendix IV に記述されています。

 

Index Guide は青緑色の表紙の本です。2冊セットになっており、Appendix は2巻目の最後に付いていますので、自分の所属している機関や国会図書館などの大きな図書館、大学図書館等で見かけたら2巻目をご覧ください。

Index Guide

Point:CA 命名法は、累積索引 (Collective Index) 期間で表される

CA 命名法の基本ルール

CA 索引名は、CAS SciFinder も CAS RN®  もない時代からスタートしたものであり、CA の索引利用者が目的の抄録に辿りつくための規則を考えて誕生したものです。組織的な名称であり、ひとつの化合物が多元的に複数の名称に対応しないようになっています。

 

倒置名称を用いて母核の構造を最初に表記するのも、索引利用者のための配慮でした。後年になってから倒置名称の命名は見直されましたが、9CI 命名法ではこの倒置名称を採用することにより、たとえばナフタレン環をもつ物質を探すときは、Naphthalene ~ や 1-Naphthalenol~ のページを見れば、そのグループの物質の置換基の異なる化合物を一覧できるという分かりやすい体系です。

 

母核 (parent) とは構造骨格に主官能基の接尾辞を付けた部分で、その母核構造についている置換基 (substituent) が次に記されます。続いて、エステルなどの誘導体を示す修飾句 (modification) が示されます。

 

次の化学構造の例で CA 索引名を考えてみましょう。

 

このような構造は次のように命名されます。

 

母核  Cyclohexanecarboxylic acid

置換基 4-(hydroxymethyl)-3-methyl-

修飾句 ethyl ester

 

この例では炭素数の最も多い骨格 Cyclohexane に対し、 

 

carboxylic acid

4-(hydroxymethyl)-3-methyl-

ethyl ester

 

の3つの官能基がついています。

 

主官能基として、どれを採用するかは命名法により定められており、(a) から順に優先的に命名されます。

 

(a) Free radicals and compounds for which substituent prefixes are unavailable

(b) Cationic compounds: coordination cations, onium, aminium, ylium cations. 

(c) Neutral coordination compounds, including metallocenes. 

(d) Anionic compounds

(e) Acids

(f) Acid halides and related species

(g) Amides

  :

 

したがって、この例では (e) Acids に該当する carboxylic acid が主官能基として命名されます。

 

CA 命名法がどのような内容なのか見てみたいという方は、以下のリンクをご覧ください。

CA 索引名 (CA Index Name) を知りたい時は

CA 命名法で付けられた化学物質の名称、CA 索引名の最新情報は、CAS が製作しているデータベースを調べるとすぐに分かります。具体的には次の3つがおすすめです。

 

 

 

また、自社で取り扱っている化学物質について、

  • CA 索引名を知りたい
  • 新規物質の場合は、CA 索引名とともに CAS RN®  (CAS 登録番号) を付けたい

というケースがあるかもしれません。

そのような場合は、化学物質命名サービスに依頼すると、1 ヵ月程度で正式な CAS 索引名について回答が届きます。

 

 

 

掲載日 2023 年 9 月 28 日