IPC の話
コラムでは、CAS SciFinder をご利用の皆さまに向けて、検索に役立つ情報や、ちょっとした豆知識をお届けします。今回は、国際特許分類 (IPC: International Patent Classification) についてご紹介します。
IPC は特許の技術内容による分類
IPC (国際特許分類 ) は、世界知的所有権機関(WIPO)が管理する特許の技術内容による分類です。
この分類は、A から H までのアルファベットで始まる 8 つのセクションで構成されており、それぞれのセクションの下にクラス、サブクラス、メイングループ、サブグループといった階層構造で細かく分類されています。
2025 年 1 月版では、サブグループレベルまで含めた分類の総数は、なんと 79,039 にも上ります。

出典:IPC 2025.01 - Statistics (https://www.wipo.int/classifications/ipc/en/ITsupport/Version20250101/transformations/stats.html)
最も、サブグループが多いのは B セクションの「処理操作;運輸」。次いで多いのが、C セクション 「化学;冶金」となっています。分類の数という限定的な側面ではありますが、細分化されている分野ほど、多方面にわたって技術革新が活発に行われていると考えられます。
IPC の改訂 (IPC Revision)
IPC は毎年 1 月に改訂されます。
IPC Revision は IPC Publication の画面で RCL のタブに切り替えて、version を選ぶと表示され、さらに各サブクラスをクリックすると、新旧の分類の対応関係を確認することができます。
2025 年 6 月 25 日時点で、すでに 2026.1 を選択できようになっていましたので、2026 年版の改訂予定を少しのぞいてみましょう。

出典:IPC Publication (https://ipcpub.wipo.int/)
化学・冶金分野では、以下の類が細分化される予定です:
・C01B3 /00-C01B3 /50:水素;水素を含有する混合ガス;水素を含有する混合物からのそれの分離;水素の精製
・C07K 16/08、C07K 16/10、C07K 16/12:免疫グロブリン
・C12N 1/06-C12N 1/20:微生物または酵素;その組成物;微生物の増殖,保存,維持;突然変異または遺伝子工学;培地
・C21D 8/02、C21D 8/12:熱処理と結合した変形あるいは後に熱処理を伴う変形による物理的性質の改良
G06 も G06F、G06Q、 G06T と見直しが進んでいる印象を受けますね。
これらは、デジタルデータ処理、ICT、イメージデータ処理といった、日々の技術革新が目覚ましい分野です。
そして、昨年に引き続き注目されるのが H10。H10 は、2023 年に新設された半導体装置のクラスです。
H10P、H10W という新サブクラスも導入し、 H01L を全面的に H10 へ移行する計画のようです。
半導体分野の検索やアラートを行う方は、今後数年間は、毎年の改訂に注意が必要です。

出典:IPC Publication (https://ipcpub.wipo.int/)
IPC News から見える未来
同じく WIPO の International Patent Classification: News を見ると、IPC の検討会のレポートが掲載されていることがあります。これにより、どの分類の改訂が検討されているのかを事前に知ることができるため、改訂の動向を把握するうえで非常に有用です。
例えば、2025 年 6 月 10 日のレポート "IPC Revision Working Group (53rd session): Report" の一部を拡大すると、このように C 536, C538 F 148 ... とプロジェクト名が記載されています。

出典:IPC Revision Working Group (53rd session)
(https://www.wipo.int/edocs/mdocs/classifications/en/ipc_wg_53/ipc_wg_53_1_prov.pdf)
改訂対象の IPC の詳細は、各プロジェクトのリンクから確認することができます。
例えば、F 186 と F 148 のプロジェクトページを開いてみると、いずれも B25J の改訂に関する内容であることがわかります。NEW:B07J、NEW:B07R と記載されており、B07セクションに新しいサブクラスが近々誕生する可能性が高いことが予見されます。


出典:IPC E-Forum (https://www3.wipo.int/classifications/ipc/ipcef/public/en)
IPC E-Forumの画面では、特定のIPC分類から関連プロジェクトを直接検索することも可能です。
気になるIPCがある方は、半年に一度程度の頻度で検索してみることをおすすめします。
改訂の動向を早めにキャッチすることで、検索戦略や技術調査の精度を高めることができます。
CAS SciFinder には対応特許の IPC も収録されている
CAS SciFinder でも、IPC を使った検索ができますので、まずは収録についてきちんと理解しておきましょう。
CAS SciFinder の特許レコードのポイント
レコード構成
特許ファミリー単位。つまり、同じ発明の特許情報がひとつのレコードにまとまっている。
対応特許からは、特許番号類と特許分類を収録。
IPC (国際特許分類)
特許ファミリーのメンバーであるすべの対応特許から IPC を収録
Guaranteed Coverage および Selective Coverage 以外の IPC も収録
IPCI (特許発行時点での IPC)と IPCR (再分類) を収録
発明者、特許出願人、抄録、索引
ベーシック特許からのみ収録
CAS SciFinder で特許検索する場合の注意点
CAS SciFinder では、特許ファミリ単位のレコード構成のため、発明単位で世界の特許を検索できるというメリットがある反面、注意も必要です。
例えば、先に述べた通り、ひとつのレコード中に特許ファミリーの情報がまとめられているため、
国名 AND IPC
といった検索を行った場合は、回答中にノイズが含まれる可能性があります。
また、Reference 検索結果画面のフィルターで、言語や発行年、国名を選択するときは、ベーシック特許の情報で絞り込んでいることになります。
CAS SciFinder の IPC 検索
CAS SciFinder で、IPC から特許文献 (References) を検索する際は、Advanced Search の項目から、Patent Identifier > IPC Code を順に選択し、入力ボックスに IPC を入れます。

クラスの検索
サブクラスの検索
メイングループの検索
サブグループの検索
まとめ
今回のコラムでは、IPC (国際特許分類) の基本構造から最新の改訂動向、そして CAS SciFinder での検索方法をご紹介しました。
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IPC は、技術内容に基づいて特許を分類する国際的な体系で、毎年1月に改訂されます。
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WIPO の IPC Revision Working Group のレポートや、IPC E-Forum を活用することで、改訂の動向を事前に把握することが可能です。
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CAS SciFinder での IPC 検索は、Advanced Search の項目から、Patent Identifier > IPC Code を選択して検索します。
IPC の定期的な改訂チェックと、CAS SciFinder に関する情報収集を習慣化することで、より効果的な特許検索を実現しましょう。
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この記事は CAS SciFinder の検索方法の提供ではありません。CAS SciFinder を使った情報検索の参考になるような収録データに関する情報や、ちょっとした関連知識を提供する記事です。CAS SciFinder の検索方法や操作については以下のページをご覧ください。
CAS SciFinder 動画 (JAICI チャンネル)
掲載日 2025 年 6 月 25 日