化学情報協会

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開発を加速するSciFinderⁿでブレイクスルーを目指す

CAS SciFinderⁿ (サイファインダー・エヌ) ユーザーインタビュー

2019年8月掲載

小西化学工業株式会社

研究部 グループマネージャー 盈 智典(みつる とものり)さん
研究部 研究グループ     新家 悟之(しんけ さとし)さん

小西化学工業株式会社 研究部の皆さん

スルホン化技術を軸に、世界に認められる製品開発力で注目される和歌山の星、小西化学工業株式会社の皆様に、SciFinderⁿ のご活用方法や、使いやすくなった点について伺いました

小西化学工業の歩みと、世界が認める開発力の秘訣に迫る

——小西化学工業の沿革や概要について教えてください。

盈さん:当社は1962年に和歌山で創業以来、スルホン化反応を主力技術に展開してきた化学メーカーです。本社のある和歌山で生産および研究開発を行っているほか、2013年より福井県でも工場・製造部門の操業を開始しております。
当社のある和歌山市小雑賀は、化学関連の会社が多く集まる地域なのですが、これには歴史的な背景があります。もともと和歌山は、江戸時代のころから織物や染色の産業が盛んでした。染色に用いる合成染料はほぼドイツから輸入していたのですが、第一次世界大戦下において輸入がストップし、染料を自国で生産しなければならなくなりました。その際、合成染料の原料としていたアニリン製造の工業化に成功したのが、小雑賀で由良精工(現在の本州化学工業株式会社)を創業した由良浅次郎という方でした。ここからさまざまな技術が派生し、周辺に多くの化学メーカーが集まったのです。小西化学もそのうちの1つです。
当社も創業当時は染色助剤を中心とした中間体メーカーでしたが、現在はコア技術を軸に新たな技術領域にも積極的に挑戦し、さまざまな用途に向けたファインケミカルの開発、生産でお客様のニーズにお応えしています。

盈さん

——主な製品についてご紹介いただけますか。

盈さん:主力製品は、DHDPS(ジヒドロキシジフェニルスルホン)です。創業当時、染色助剤向けの低純度品を生産していた当社に、海外の大手フィルムメーカーから高純度品の合成依頼があったのが開発のきっかけです。世界で初めて高純度品の工業化に成功した当社は、その後、英国の化学メーカーにもDHDPSを供給することになりました。そのメーカーはスーパーエンプラであるPES(ポリエーテルスルホン)を開発し、その原料として当社のDHDPSを求めたのです。その後、いつまでも和歌山の小さな町工場から原料を購入しているわけにはいかないと、そのメーカーでもDHDPSを自社開発しようと試みられましたが、結局、当社が特許を取った技術のほうが優れているということで、最終的には、技術ライセンスを供与することとなりました。世界最大手企業に認められたこのときの経験は、今でも私たちの誇りです。現在はPESを生産しているメーカーにDHDPSを供給しています。PESは航空機向けや人工透析膜用などで需要が増えており、相まってDHDPSの需要も高まっています。

——ほかにも新たな技術領域を展開されていますね。

盈さん:はい。近年のインドや中国の化学メーカーの台頭に危機感を感じており、中間体メーカーを脱却して新たな技術領域に転換していこうと、研究開発に力を入れています。
創業当時から強みにしているスルホン化技術を活用して、ポリマーの新規スルホン化方法を開発しました。当技術から開発したスルホン化ポリエーテルスルホンは、スルホン酸基が示すプロトン伝導性やエレクトロン伝導性などの性質から考えれば、燃料電池の電解質膜や機能分離膜などへの応用も期待でき、スルホン化技術の新たな用途拡大に向けた取り組みを進めています。
また、PSQ(ポリシルセスキオキサン)という、無機材料と有機材料の両方の性質を持つ化合物の研究開発にも取り組んでおります。無機的な特性は主鎖のシロキサン結合によって、有機的な特性は側鎖の有機性官能基により発現する『有機/無機ハイブリッド材料』です。PSQの耐熱性や光学的な透明性、さらに硬度などが注目されており、半導体レジストやLEDの封止材・被覆材向けとして市場の拡大が期待されています。弊社は、今後の量産体制を見据えて、2018年10月に、新プラントを建設し、無機(PSQ)専用ラインを設けました。
このほか、2002年から航空機用炭素繊維複合材料に使用される多官能エポキシ樹脂の受託製造を担当しており、エポキシ樹脂製造は当社の新たな強みとなりました。

——小西化学工業の開発の強みは何でしょうか。

盈さん:私たちが受託製造をお受けする際は、既に出来上がったものを受け取って造るのではなく、お客様の開発段階から一緒に製品開発に取り組むようにしています。
また、研究開発の際には、実際にスケールアップして生産できるところまで想定して、生産技術や化学工学を意識しながら研究室での実験に取り組むようにしています。これを私たちはR&Dではなく「R&D・E(リサーチ&ディベロップメント・エンジニアリング)」と呼んでいます。

——世界に認められる技術を生み出し続ける秘訣はどこにあるのでしょうか。

盈さん:とても前向きで風通しの良い社風ですので、それが社員のモチベーションに影響しているかもしれませんね。社長は率先して若い社員ともコミュニケーションをとっています。例えば「ムービングデスク」という取り組みがありまして、毎月1週間、社長の席を各職場に移動し、そこで社員とのコミュニケーションをとったり、懇親会を開いたりしています。また「聞くコミュニケーション」という取り組みもありまして、社員を1人選定し、社長と1対1で30分程度話す機会を設けています。そうしたコミュニケーションの場で社員から出たアイデアが良いものであれば、社長がすぐに経営陣に伝えて実現に向けて動いたり、実際に反映されたりしますので、話した社員のモチベーションも高まるようです。当社では若い社員でもベテラン社員でも、やりたいことがあれば一先ず上司や社長に挙げてみよう、積極的にアイデアを出そうとする社風があると思います。
社長の小西弘矩は2016年に日刊工業新聞社主催の「優秀経営者顕彰」で優秀経営者賞も受賞しています。

新しいSciFinderⁿが業務の効率化に寄与

——日頃、SciFinderⁿ をどのように活用されていますか。

新家さん:私は情報探索グループに所属しており、研究開発に加えて、特許関連の調査を行ったり、社内からの依頼を受けて化合物の合成ルートや製法などを調べたりする際に活用しています。社員各自でも、開発の初期段階での情報収集などに利用しています。

図1 SciFinderⁿの検索画面/シンプルな画面で高度な検索が可能な最新インターフェース

新家さん

——SciFinderⁿの使い勝手はいかがでしょうか。

新家さん:初心者でも使いやすいインターフェースになっていますね。SciFinderを使ったことのない新入社員でも抵抗なくすぐに使うことができ、とても便利だと話していました。
私自身は、SciFinderⁿで標準搭載となったPatentPakにとても助けられています。特許中の化学物質の記載位置が一目でわかるので業務の効率化につながっています。海外の公報がテキスト検索可能なPDFファイルとして得られるため、キーワードで検索したり、翻訳ソフトにコピー&ペーストしたりすることもできます。そのため、かなり業務時間の短縮になっています。また、CAS登録番号 (CAS RN®) で物質を検索し、文献の結果を表示すると多くの特許もヒットしますが、コンセプト(索引)で絞り込みができるのが便利ですね。

図2 PatentPak 機能/特許明細書PDF ダウンロード、物質の記載位置が連動する PatentPak Viewer が使えます

検索結果のURLをメールボタンから担当者へ共有できるのが便利ですね。受け取った方がURLをクリックしScifinderⁿにアクセスすると、同じ検索結果を、検索時の絞り込みまで含めて共有できるのはとてもいいですね。また、受け取った方が、より広い条件で見たいときは絞り込みのチェックを外したり、逆に絞り込んだりすることも簡単にできますので、情報共有がスムーズになりました。

図3 メールで検索結果を共有/元の回答で使った検索キーワードや絞り込みの条件も含めて共有できます

反応検索で論文・特許本文中の実験項情報が表示されるのも助かります。論文を取り寄せるとコストも時間もかかりますが、我々は論文すべての情報が欲しいわけではなく、実験の部分だけ知りたい場合も多いので、経済的にも時間的にも節約できています。

図4 反応検索結果から化学反応手順の表示/原文献なしでも実験手順を確認できます

——SciFinderⁿになって実験項に収録される雑誌の種類も増えましたので、より便利にお使いいただけると思います。特許のモニタリングなどにも使われることが多いのでしょうか。

新家さん:アラート機能を使って自社製品のCAS RN®を含む文献を週1回モニタリングするようにしています。どういった用途に使われているのか、また特許侵害されていないか、良い情報、悪い情報、両面の情報収集に役立っています。結果は年単位で絞り込むこともできます。

——SciFinderⁿ について何か実現してほしい機能はありますか?

新家さん:アラート機能ではありませんが、新たに検索した結果の絞り込み機能について要望があります。近年は報告される文献数も増えてきましたので、月単位でも絞り込みができるようになるともっと助かりますね。

JAICI:頂きましたご意見はCASに伝え、今後の機能開発に役立てます。

新家さん:それから以前から助けられているのがヘルプデスク(※)です。困ったときに電話やメールをすると、丁寧に素早く対応していただけるので、非常に助かっています。

ヘルプデスク
専門的なバックグラウンドを持つ担当が常駐しており、操作方法のみならず、皆様の研究課題に適した検索方法やアプローチ方法をサポートさせていただいております。電話・メール・FAXで問い合わせいただけます。是非ご活用ください。

製造業を通じて社会に貢献できる喜びを

——お二人の今後の抱負をお聞かせいただけますでしょうか。

盈さん:小西化学の強みは、一人ひとりのアイデアをすぐにトップに挙げられる風通しの良さで、やりがいを感じられる職場だと思います。今後も会社として技術力を高めながら社会貢献をし、それが自分や社員の幸せにつながるような仕事をしていきたいですね。

新家さん:受託開発、自社開発いずれでも、自分のアイデアが製造業を通じて世の中に出回っている、さまざまな製品に役立っていると感じられると嬉しいですね。当社が生産するのは最終製品ではないので名前が表に出るわけではありませんが、それに私が関わっているんだと、私がそのブレイクスルーの1つのきっかけを作ったんだと、そう言えるような開発を常に目指していきたいです。

JAICI:本日はどうもありがとうございました。

ユーザー紹介

小西化学工業株式会社
所在地:和歌山県和歌山市

1962年創業、売上高52億円(2019年3月期)、社員数125名(2019年4月時点)。有機合成一般、スルホン化技術、エポキシ化技術、ケイ素系有機・無機ハイブリッド材料を得意分野として、精密化学品・機能性化学品の研究開発・製造・販売を行う。「インテグラル・ケミストリー(擦り合わせの化学)」をコンセプトに、情報電子材料、航空機材料、燃料電池や有機ELなど先端技術材料、医薬中間体などを用途先とした製品で顧客のニーズに応えている。

本社工場/左建物:本社事務所、中央手前建物: 新規開発プラント (2018年10月完成)

SciFinderⁿ (サイファインダー・エヌ) は、研究者が必要とする科学情報をかつてない早さで提供できるようにした SciFinder ファミリーの製品です。